タイパーインタビュー11:maya(Anjera)さん
このインタビューは、2020年大晦日の「108万打鍵チャレンジ!」のdiscord内ボイスチャットにて、Mayaさん(Anjeraさん@moet_hounds)が話されたタイピングの上達論を受けて、追加でお話をお聞きしたものです。
もしまだそちらをお読みでない方は、下記のDiscordサーバーにてかめおさんによる文字起こしされた記事が読めます。ぜひお気軽にご参加ください。
上記の文字起こし記事がアップロードされた後、Mayaさんに改めてお話をうかがいました。
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――大晦日、DiscordでMayaさんがお話しされていた内容について、参考になったという声を多く聞きました。Mayaさん自身は読み返してみて、説明が足りていなかった部分があったとTwitterでおっしゃられていたので、改めてインタビューでお話をうかがいたいと思います。まず、改めてタイピング講義で一番伝えたかったところについて聞かせてください。
俺が考えるタイピング上達論は、すごーく簡単にまとめると、
「地力をあげる=トップスピードをあげる」ではなくて、
「地力をあげる=ワーストスピードをあげる」っていうことなんです。
――特にタイプウェルはランダムな単語の羅列なので、トップスピードを必要以上に上げてしまうとその後の運指の組み立てが間に合わなくなってしまう、というような話をされていたと思います。
そうですね。タイプウェルは特にそんな気がします。
でも、他のタイピングも全部一緒だと思ってます。実用はちょっとわからないけど。
――たとえばエタイのような固定文で、トップスピードをあげるデメリットはなんですか?
トップスピードが結果的に上がることは勿論メリットで、それを繰り返して記録に繋がるんだと思いますが、ワーストを無視してトップスピードを優先すると、遠回りになるんじゃないかと思ってます。文章のなかに得意な部分があったときに意識的に速く打つのはいいんですが、速く打ちすぎると指のテンポが崩れるというか、その前後に悪影響が出ることが自分のなかではかなり多いです。
だから無理のない加速、いわゆる後半加速で稼ぐ感じがうまくできてるときは、全体的にまとまっていく感じですね。
――なるほど、打鍵のリズムを崩さないことが大事なんですね。
エタイだと苦手なワードを取り出して、Weather Typingで繰り返し練習されていたそうですが、それ以外にもワーストスピードをあげるための練習は何かやっていましたか?
タイプウェルの単語の場合、登録せずにその場で指動かしたりぐらいかな?一応意識付けを強くするために隣にメモ帳おいたりもしますw
単語にしても文章にしても、目的は同じなんですけどね。考えなくても打てる、条件反射で打てる、ぐらいまでの状態に持っていきたいという感じです。
トプスピは全然意識してなくて、指に迷いがなくスラーっと打てる、そういう状態ですね。結果的に加速できるところはもっと加速できるようになっていくのでトプスピも上がりました。
――なるほど。苦手だったポイントに対して無駄に意識を割く必要がなくなってくると、余裕が持てるようになって、そうすると多少加速してもリズムが崩れなくなるのですね。
そうですね。苦手だと意識したものが目の前にあると、りきんでしまいますからね。
――Mayaさんは一番打っていた時期でも、トップスピードを磨いたほうがいいのかなという葛藤はなかったんですか?
全然なかったですね・・記録をのばすっていう目的では、ですが。WT対戦は後半加速を意識したし、歌謡はそういうゲームなのでトップスピード狙いもしましたよ。
今おれが話してる内容は自分のオリジナルの考え方だと思ってるんですが、その根っこの部分はタイプウェル始めたころに憧れてたタイパーの一人(おびらんさん@obi_ran)の考え方を参考にしていたので、たぶん当時からワースト意識が強いです。りきまずにまったり打とう、止まらなければ結果早いでしょ?みたいなw
――なるほど、おびらんさんのまたーりヽ(´ー`)ノタイピングの影響でしたか。
全盛期の頃も、ワーストスピードはまだまだ伸ばせたという感触があったのでしょうか。
ありましたねー。毎回タイプウェルのワーストは初速絡みだったので、そこ次第でしたから。WS700~TS1000以下でZ台とかも珍しくない感じw
――タイパーが特に無理な加速をしてしまうのは、必要以上に目の前の記録更新を狙ってしまうときに起こりがちなのかもしれません。記録更新を狙う際の姿勢についても、改めてお話を聞かせてください。
加速を意識しすぎて、結果その直後に硬直、記録に繋がらないっていうのは俺自身もよくあります。「無理なく打てる速度」と「限界の速度」、この中間点をキープし続けることが一番良いと思っていて、それを意識しながらやっています。
あと最近意識していることは、慣れているワードとか得意なワード、意識しなくても一瞬で消せるようなワードでもちゃんと1打1打頭のなかでは意識しながら打ってます。
ただ脳死で加速加速!ってやっても、それが文末とかならいいんでしょうけど、加速加速!が自分の限界こえちゃう場合、絡まっちゃうじゃないですか。でも、1打1打しっかり意識しながら打ってると、そういう悪いクセがつかないんですよね。
一瞬でバッて消そうと思ってないって感じですかね、実際の速度は一緒ですけど。
――なるほど、打鍵としては塊で打つような文字列でも、意識の上では一つ一つへの意識を保っておくのですね。
そうですね!「条件反射で打てるところまでもっていく」というのは指の話で、頭では一打一打です。
――他に、この前のDiscordでのお話で説明不足だったところはありますか?
右手親指の入門編として、英語によくある「my」を挙げましたが、日本語でも「mu」がそのポジションですね。みんなやってみよう!
文章打つときの「、」も親指使えるようになると減速しなくなるのでオススメです。
あとタイプウェルでいうとトップスピードって 15打?だったか知らないですが、みんなタイプウェル以外でもトップスピードって言葉よく使いますよね。それは多分単語単位だったり、短い文章単位だったりするんでしょうけど、極端な話トップスピードはそのワードだけ抽出して、そればかりマグレ狙いでもいいから速度意識でうってればトップタイパーとそんなに差ないと思うんですよね。たとえば「ありがとう」とか。
タイピング知らない人でも これだけを毎日練習したらZタイパーくらい早くなりますもん。だから、「タイピングの地力=ワーストスピード」だと思っています。
――なるほど、わかりました。
ああそうだ、余談になるかもだけど、昔、今ほどネット文化が発達する前のほうが上位タイパーの考え方とか、吸収できる機会が多かったんですよね。発信する手段がブログくらいしかなかったから、dqさん、おびらんとか、よく見てましたね。
俺が離れてる間にめちゃくちゃ速いタイパーがたくさん出ているはずなのに、ブログ文化じゃなくなったから意見が聞けない気がしますね。
――確かに、Twitterは気軽に記録が共有できる反面、字数に制限もありますし、話もすぐ流れてしまいますね。
そうですね、込み入った話することはほとんどないです。切磋琢磨が難しい気がする。WTロビーとかは、それに適してたんですけどね。
要はあーだこーだ言い合える場がないとお互い伸びにくい、って感じですね。
――そういう意味では、たのんさんが毎年やっているタイパーアドカレなんかは、ある程度まとまった文章が読める貴重な機会かなと思います。あとはタイピングサミットのようなオフ会などでは情報交換もされていますが、いずれも機会が限られていますしね。
そうなんですよね、オフはすごくいい機会だけど、敷居は高いですからね。
――そういう意味では、もともとこのインタビューの発端になった話もDiscordでしたし、そういった場がうまく活用できたらとは思います。
そうですね~まったく同感。
――それで言うと、歌謡勢は比較的通話しながら情報交換しているイメージがあります。
そうですね。歌謡って部屋つくってマルチやるゲームだけど、半分以上雑談ですしね。雑談目的で長時間いるプレイヤーも結構いますw
――この年末年始には僕(かり~)も、通話しながらいろんな方と対戦させてもらいましたが、その場で運指のことなど気軽に情報交換できるのが楽しかったです。ああいう知見も長期間蓄積していったら差が出てくるでしょうね。
うんうん。歌謡民が伸びるのは、今のどうやって打ってんの?とか、そういうやりとりが日常だからでしょうね。歌謡で最適化してない人ほとんどいないはず。
――歌謡はゲームシステムとしても最適化が求められる部分があると同時に、そういう知見を共有する文化の影響も大きいのでしょうね。
うんうん、だから歌謡が盛り上がってた頃、タイプウェルやWTやりはじめたひとたちは化け物たくさんw やっぱりそこが固定ワードからはじめる最適化の強みな気がする。
――ところでDiscordでも少し話していましたが、多趣味なMayaさんから見て、タイピング界隈はどのように見えていますか?
タイピングって今の時代だれもが身近なコンテンツではあるんですが、競技性としての面白さは全然周知されてませんね。身近すぎるからってのも原因なんですけど、魅せ方がよくないと思います。
ゲームセンターって面白そうなゲームがいっぱいあるんですが、やっている人をみて、「楽しそう」「俺も(私も)やってみたい」そう思われるようなゲーム、つまり新規参入が多いゲームというのは条件があって、それは「やらない人が見ても、何をやってるのかが一目瞭然でわかりやすいこと」です。メダルゲームなんかも、ふらっと気軽にやる人が多いのはそこだと思います。
「なんかすごいことやってそうだけど、何してるかわかんね・・・」は興味あっても敷居が高くなっちゃいますね。一般的な方がトップタイパーのタイピング見てもまさにそれだと思います。すげー!でも別世界の人・・・みたいな。
でも2020年の4月頃、「にじさんじ打鍵王」が開催された前後は、WTロビーにも人がいたんですよね?まさに、魅せ方だと思いました。というか、俺がタイピングに戻ってきたきっかけも、RTCで司会や運営をされていたabaraさんのインパクトがかなり大きいですしね。
個人で練習するソロコンテンツな以上、じゃあ誰が普段魅せんねんって話ですが。WT対戦とか歌謡タイピングとかはそういった面で、入口として適していると思います。もうほとんどなくなっちゃいましたけど、ゲーセンのTODもそうですよね。
――そうですね。昔はTODがゲームセンターの入り口に置いてあったりして、風で手が冷えたりもしたのですが(笑)、しばらくやっていると自然と人だかりができることもありました。
そうなんです。興味さえ持ってやりはじめたら、あとは上達を目指す楽しさにすぐ気づけますからね。
一応RTCの動画とかも見ましたが、もう一つ問題なのは、実況が難しすぎる点ですねww 1ワードのやりとり一つの中に、言えることがたくさんあるんですが、展開が早すぎて盛り上げるのが大変そうです。
――そうですね。たとえばスロー再生をすれば解説できるところもいっぱいありそうです。
それも、タイピングの認知度が広まっていけばおのずとそうなっていくような気がしますw
――タイピング界隈は客観的に見ても、盛り上がるだけのポテンシャルがあるということですよね。
そうですねー、10年くらい前から思ってます。スマホ時代がきてしまったので、タイピングのコンテンツがあまり増えてないのがつらいところですね。
――ところで、最近のMayaさんはエタイをメインにリハビリされているのですか?
ですね、一応エタイメインです。タイプウェルとWTもちょこちょこやってます。
――具体的にはどのように練習されていますか?
「記録を狙う時間帯を決めて、そこで1時間集中して打つ」です。
苦手ワードへの対応とか分析はその1時間の中で並行してます。
エタイはワード数がそう多くないので、頭の中で済ませてますね。まだ復帰後、WTの活用まではやってないかな。
――では最後に、今後タイピングで目指す方向や、タイピングの関わり方で考えていることをお聞かせいただければ。
個人としてはやっぱり、エタイに限らず一番良かったころの記録、それを更新できるくらいがひとまず最初の目標です。その後は飽きっぽいのでわかりません・・w
関わり方のほうは、今回のお話もそうですし、それに通じるDiscordへの参加もそうです、トップタイパーではないですが、何か言ったことをきっかけに上達してくれる人がいるだけで嬉しいですよ。
盛り上げる側としてできることがあればやっていきたいとも思ってます。具体的にはわからないし丸投げなんですけどw
――ぜひ、様々な活動にも期待しています。インタビューへのご協力ありがとうございました!
ありがとうございました!
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mayaさん、年始に急遽お願いしたにも関わらず、快くご協力いただきありがとうございました!
次回、かめおさんへのインタビューも近日アップ予定ですので、そちらもぜひお読みください。タイピングを始めるきっかけとなった"キーボードがガチャガチャうるさい人"の話や、過去に経験した腱鞘炎の話などをじっくりうかがっています。