タイパー・インタビュー

タイパーアドカレなどで行ったインタビューまとめです(かり~)

タイパーインタビュー12:かめおさん

 今回はタイプウェルR常用ZJ,K常用ZJ,E基本ZGなどの記録をもつかめおさん(@kameo53)に、タイピングを始めたきっかけや、腱鞘炎の体験などをうかがいました。

◆ ◆ ◆

 

――タイピングをはじめたときのことを教えてください。

 競技として始めたきっかけは、身近にものすごく速い人がいて、単純に自分も同じ位速く打てる様になりたいと思ったからですね。実際、はじめは秒間2打くらいでしたし。

 

――それが、ぱらさん(※paraphrohnさん)だったんですね。

※paraphrohnさん

 国語R総合ZH、WTLv.11、Intersteno2016多言語オンライン大会優勝などの実績を持つタイパー

  同じ高校なので、情報の授業でタイピングの速度をみんなで測りましょうみたいなのがありまして、たしかP検のソフトだったと思いますけど、教室の中に一人だけなんかガチャガチャやばい音立ててる人がいるわけですね。

 

――ガチャガチャやばい音立ててる人(笑)

 いやー、学校のキーボードなので、メンブレンですごいうるさい感じでしたね。そんで、実際に見せてもらったら、えっタイピングってこんなに速く打てるものなの!?っていうくらい、信じられないくらい速くて。
 それをきっかけに、自分も練習してみるかって、家に帰ってから自分でサイトとかを見つけて練習するようになったのが一番はじめのきっかけですね。
 はじめはP検のソフトで練習してたんですけど、他のサイトとかも探してるうちに、今はなきSongTypingを見つけました。曲に合わせてタイピングするのが楽しくて、大ハマリしたわけなんですけど、最難曲のランキングで一人だけ別格のスコアを出して軒並み1位を出してる人がいて、すごいなーって思ってたんです。
 ちょうどその頃高校生だったんですけど、お昼ごはんをばらさんと食べるようになって、お昼ごはんの最中に「タイピング速くなりたいんだけど、どうすればいい?」みたいな話をしたら、SongTypingの話題が上がって、えっそれ自分だよ、みたいな展開になって、えええええええええっwwwwってなった感じです。

 

――なるほど、世界は狭い(笑)

 ほんとそうですね 笑
 そっからは、めちゃくちゃ速い、同じ話題ができる知り合いができたっていうのもそうですし、SongTyping内の対戦機能やチャット機能などを通じて、SongTypingユーザー同士とSkypeとかでもつながるようになって、オフ会とかもするようになって、Skypeコミュニティの中で、今はなきTypenistとか、Typewellとかを知って、SongTypingとTwitterの両方をやってる人を通じて、Twitterコミュニティにも参加するようになってと、ずるずる沼にハマっていった感じですね。

 ネットで人と交流するっていうのが、タイピングを通じてが始めてだったので、今はネットで知らない人と交流するのが当たり前の世の中になってきましたけど、そもそもそこがはじめものすごく勇気が入りましたし、僕としてはものすごく大きな出来事でしたね。
 SongTypingのチャット欄に何かを書き込むっていうのが、そもそもものすごいハードルでした。身近にぱらさんの存在がなければ、きっとチャット欄になにかを書いて、他の人に喋りかけるなんてしてなかったでしょうし、今の自分はいなかったと思いますね。
 一度壁を乗り越えると、そっからはトントン拍子で、オフ会とかにも参加するようになりましたけど 笑



――腱鞘炎になったのが2011年頃とのことですが、その頃のことを詳しく教えて下さい。

 その頃は、かなりタイピングにはまってたのもあって、夜中もあんまり寝ずにタイピングばかりしてたっていうのが一番よくなかったですね。打鍵/時間が多すぎたっていうのは大前提としてありましたけど、蓄積するダメージもあれば回復するダメージもあるわけで、一番回復する時間帯の睡眠を削ってまでタイピングすると、一気に腱鞘炎のリスクが増したって感じですね。

 あと当時は市販のキーボードも使っていなくて、ノートPC付属のパンタグラフキーボードを使っていたのも非常に良くなかったです。パンタは重かったというのが一つと、これは、個人的な意見になりますけど、当時はとてつもなく乱打で、かなり力強くキーを入力する癖があって、オフ会のときとかもキーボードとかパソコンが壊れそうって言われる感じだったので、パンタグラフでそういう打ち方をしてしまうと、キーストロークが浅いのもあってすぐに底付くので、入力時に叩いた力が作用反作用でそのまま指に跳ね返ってくるんです。よくキーの反発を利用してトータルで見たタイピング速度を速めるっていうのが言われますけど、それのかなり極端な状態になってしまってた感じですね。反作用で返ってきた力が、指を動かした際に消耗するはずの腱鞘に対して、どうして悪影響があるかと言われると、理屈が通らないなとは自分でも思いますけど、体感的にはそれも、原因の一つだと感じました。

 他に、よくなかったなと思うのは、タイピングする際の温度環境ですね。最近のノートPCではあまりないと思いますけど、かなり古いノートPCだったので、ずっと使っていると発熱がけっこうすごくて、タイピングしている際もPCの熱が手に伝わってくる感じでした。冬だと嬉しいじゃん!っていうのがタイパー的思考だと思うんですけど、腱鞘炎が悪化してくると、特に夏場は、徐々に指が熱を持つようになってきて。
 炎症を起こして熱を持つレベルの場合、一概には言えないですが個人的には冷やした方がいいと思っていまして、炎症を起こしていても常にPCの熱で指が温められてたっていうのも、腱鞘炎を悪化させた要因の一つだと思ってます。

 それは夏場の場合の事例ですけど、冬になれば逆に指が冷えることで色々問題が発生します。熱を持つタイプの腱鞘炎(いまさらですが、自分が一番悪化させたのは、指の腱鞘炎です)の場合、悪化してたり、休めた方がいいなっていうタイミングが、熱の具合で気付けるもんですけど、冬場で暖房もつけていない場合、指が冷えて感覚が鈍っているせいで、その止め時に気づくのが遅れたり、気づかなかったりするので、そういう意味でリスクがあると思ってます。

 あとは、通常のスポーツで身体を動かすときと一緒で、身体が温まっていないうちに激しい運動をすると痛めやすいっていうのは、指にも通じると思います。特に指は身体全体において、ものすごく冷えやすい部分なので、気をつけた方が良いと思います。

――当時、タイピングは一日何打鍵くらいしていたか覚えていますか?

 正直あまり覚えてませんが、twilogを見ると、

腱鞘炎の自覚があるのに10万打鍵とか平気で打ってるので、

多分多い日で20万打鍵に届かないくらいだと思いますね。ちなみに、打鍵数の目安としては、ローマ字とかでTypewellを一時間ずっと打ってると3万打鍵ぐらいのイメージですかね。当然速度にもよりますけど。

 

――腱鞘炎の初期症状はどのようなものでしたか?

 指に違和感はありましたね。これは痛い、、、のか?みたいな、どう表現すればいいのかわからないですけど。あとは悪化してくると、指が腫れぼったい感覚が出てきたり、そのまま悪化させると文字通り腫れてくるんですけど。指の腱鞘炎だとそんな感じです。
 手首とか肩?とかの腱鞘炎だと、なんて表現すればいいんだろう、、、凝った感じというか、ストレッチをしたくなる感覚みたいな感じがはじめに出てきたりもしますね。痛みがある段階だと、それはもう腱鞘炎なので、激しいタイピングは控えて指なり、手首なり、腕を休めた方がいいです。まぁ普段と違う感覚があれば、腱鞘炎の前兆だと思っておけばいいと思います。
 今だと、大晦日の108万打鍵チャレンジの名残で、右手の甲のあたりに痛みに届かないような違和感があって、左手で右手の甲をぐりぐりしたくなりますね。

 

――かめおさんの場合、最も酷かった頃の症状はどんな状態でしたか?

 一番ひどかったときは、指が痛くて大学の講義のノートが取れませんでしたね。とにかく指を動かすだけで痛くて、友達のノートを写真で撮らせてもらってました。
 その時は、腱鞘炎でも打ち続けて悪化した感じです。あとは睡眠時間をしっかり取っていなかった時期に一番悪化しました。そういえば音ゲーもやってたんでした。自分もテルさんと一緒で、それも良くなかったですね。
 症状系でいくと、テルさんのブログ記事「指の治療」が、詳しく症状が書いてあって、参考になるかもですね。

 

――病院には行かれましたか?

 自分は病院には行ってないですね。悪化させすぎた場合はステロイド注射したりする必要がありますし、もっとひどい場合は外科手術したりしますけど、自分の場合は、湿布をはったり、日常生活でどうしても指を動かしてしまうので、添え木的なものを指につけて強制的に指が動かない状態にしたり、あとはお風呂で指のストレッチをかなりやったりとか。
(※かめおさんおすすめのストレッチについては記事の最後にまとめてあります)

 他には、寝てる間は血行よくするために手袋とかはめて温めた方が良いのかな、って思ってやってみたりもしましたけど、これはあんまり効果なかったですね。たぶんやめたほうがいいです。

 

――そういった対処をして、どれくらいの期間で改善が見られたのでしょうか?

 10年も前なので記憶がかなりあやしいですが、一番ひどい症状は、1、2週間で落ち着いたと思います。ずっと友達にノートを写させてもらっていたような記憶はないので 笑
 1ヶ月でだいぶ治ってきて、2、3ヶ月で、多少の名残はあるものの、だいたい治ったっていう感じだと思います。名残というのは、一回腱鞘炎をやらかすと、癖になって、同じ部位の腱鞘炎が発症しやすくなることを言っています。

 

――その後は、タイピングとの関わり方も変わりましたか?

 そうですね。個人差はありますけど、たくさん打ってればどうしても腱鞘炎になるので、打ちたくて打ちたくてしょうがない時期は、打鍵カウンターを使って、1週間ぐらいのスパンで自分の限界レベルを超えてないかどうかみたいなのは、気にして打つようにしてましたね。
 ただ、打ちたくて打ちたくてしょうがない人は、さっき挙げた過去ツイートみたいに、バカみたいに打っちゃうので、結局打つにしても、指の負荷が少ないJISかなの練習時間とか、当時はまだ英語が遅かったので、英語を打ったりだとか、すべキーに手を出してみたりとか。あとは、長時間ぶっ続けで打ち続けるっていうのが一番指の負担が大きいので、たとえば一日9万打鍵打つとしたら3万打鍵毎に他のこと、僕の場合だと、昔から小説家になろうのユーザーなので、Web小説を読んだりして指を休めたりだとか、みたいなことも意識してました。途中休憩を挟むだけでも、指の負荷はぜんぜん変わりますし、なにより、その方が良い(指の)コンディションで練習ができて、気持ちいいですしね。
 他には、タイピングの練習ソフトによっても結構指の負荷は違いますね(連続打鍵数的な意味で)。

 

――JISかなを始めたのは腱鞘炎がきっかけですか?

 腱鞘炎ではなかったはずですね。たしか2011年の年末に始めたと思うんですけど。
 当時、記憶が怪しいですけど、たしか常用ZJが出た頃で、あるタイパーさんが書いたWeb小説に対して、偉そうに相手の気持ちを何も考えてない批評をしてしまいまして、相手からWeb配信しながらWeatherTyping対戦をしようって言われて、公開処刑でぼこぼこにされるという自業自得なことがありまして、かなり音ゲーにはまってたりしたのもあって、一旦ローマ字入力から距離をおいてみようかなーってJISかなを始めたんだったと思います。

 もともとローマ字を我流運指で始めていて、使用している指の本数がかなり少ないところから(たしか左手は345、右は78)、薬指を使えるように訓練したりとか、かなり自分の運指にコンプレックスがあったので、せっかくなので、小指も使えるようにJISかなで訓練しようっていうのもありましたね。

 

――その時の習得方法を先日もTwitterで書かれていましたね。

 凪沙さんの場合だと、この方法で、2時間で9割くらいはキーの配列が頭に入ったそうです。自分はこれに更にノーミス縛りをつけていたので、それで早く覚えられたのかもしれませんが 笑 

 ちなみに二刀流(QWERTYとJISかな両方使えるよう)になると、日常使いとしてどっちを使うかっていう選択に直面すると思います。かな入力の場合、業務上数字であったり、記号であったりを打つ頻度が高い方は、かなり不便を強いられるっていう理由で、通常はローマ字入力を選ぶはずと自分は思っていて、それでもあえてJISかなを使っている大きな理由として、指の負担が減らせるからっていうのがあります。

 

――かめおさんといえば、今では英文タイピングのスペシャリストというイメージがあるのですが、英語の練習については特に何を意識しましたか?

 安定感を増やすために、小指まで使うようにしてたりとか、最適化とかは結構取り入れてますね。まだまだ取り入れられてない最適化はたくさんありますけど。
 あとは、この単語いつも打ちにくいなー、手のリズムが崩れるなーっていうところは、当然チャンク分けを変えますね。英文特有の練習でいうと、ing、wh、ere、ny、ould、n'tみたいな頻出チャンクが結構あるので、typeracerとかをやってる時に、馴染みのない単語がきても、頻出チャンクに分解してみると、あれ、全部馴染みのある指の動きじゃんっていうのが、よくあるので、そこをしっかりと身に付けていくと、かなり速度も安定しますね。
 でもまぁ、こういう最適化はネットに転がっているので、参考URLだけ書いときます。(※参考URLについては文末参照)

 

――現在のタイピングの目標や、向き合い方について考えていることを教えて下さい。

 今はタイピングの目標は特にないですね。楽しむ、ただそれだけです。

 向き合い方については、年齢を重ねると、記録を伸ばすのが難しくなってくるのと、自分の場合、仕事が忙しくて、タイピングに割ける時間が限られているっていうのもあるんですけど、とりあえず、他のタイパーさんの話を聞いたり、見たりしていると、30歳ぐらいまでは記録は伸ばしていけそうなので、そこまではまだまだ自分は伸びるぞ!っていう意識を持ちながら楽しみたいと思ってます。

 あとは、タイピングがもっと盛り上がればいいな、とは思っているので、イベントなどがあれば今後も是非なんらかの形で参加していきたいと思ってます。

 

――かめおさんは、タイピングのどういった部分に楽しさを感じますか?

 一番代表的なのは、やっぱり記録更新の喜びだと思いますけど、他のスポーツとかでもよくあるのは、自分が思い描いた理想通りに動けた時の喜びですかね。たとえば、TypingTubeで良い記録が出たときは当然嬉しいんですけど、記録の嬉しさというだけではなくて、打つ前から「自分ならこれくらいできるはず」っていう理想のイメージがあるわけで、その理想にほぼほぼ近しい形で、目立ったミスもなく最後まで気持ちよく打ち切れた時の達成感というのもあったりしますね。

 他には、自分の動きに合わせて、気持ちよく文字が消えてくのが純粋に楽しいっていうのもありますし、というかタイピングしているだけで楽しいですよね。
仕事中もタイピングするのが楽しいので、よくある定型文の、
  「いつもお世話になっております。
   ○○○株式会社のかめおです。 
   標記の件、」
とかも、定型文として登録しておけばいいのに、わざと毎回自分で打ってますし。

 当然、チャンクの分け方を考えてるときとかも楽しいですよね。タイピングゲームによっても攻略性が違うので、それぞれのゲームに合わせて最適化するのとかも楽しいですし。いつもと違うキーボードで打ってみたりするのも楽しいですし、タイピングを通じていろいろな人と交流するのも楽しいですし。まぁ好きなことだったら何でも楽しく感じるものなので、細かい話をしだしたら、切りがないですね。

 タイピングそのものが楽しいって感じですね。「タイピング=楽しい」。まぁ、楽しくなくなるようなことをしないように、気をつけるっていうのはありますけどね、楽しくない練習方法はしないですし。
 「タイピング=楽しい」になるようにタイピングを嗜むのが、やっぱりいちばん大事だと思います。

 

 ◆ ◆ ◆

 かめおさん、ありがとうございました!

 なお、かめおさんがおすすめするストレッチや最適化関連の記事については下記にまとめましたので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
 

<参考リンク>

【手指・手首の痛みを改善】内在筋をほぐして再発を防ぐ簡単なストレッチ

 「最後のストレッチは、薬指を独立させる上でも役に立つかもです」とのこと


“A fan of the Dvorak layout”(司さん)

Dvorak配列での最適化

Dvorak配列での最適化 Ver.2

Dvorak配列で最適化 最新版

 Dvorak配列の習得に伴う他配列への影響

 

"La Hiroringo 最適化による高速アルペジオの追及"(ひろりんごさん)

最適化の習得に向けて(ブログ)

Ringo最適化講座(別ページ)

 Step1:基盤となる最適化

 Step2:キーの使い分けによる最適化

 

permilの日記(permilさん)

タイプウェルを10年ぶりに更新した話、または完全固定運指からの脱却の道程 (導入編)

タイプウェルを10年ぶりに更新した話、または完全固定運指からの脱却の道程 (前編)

タイプウェルを10年ぶりに更新した話、または完全固定運指からの脱却の道程 (後編)

 

『タイピングProfessionals』(タイピングガチ勢)

 2020年12月より、電子版が無償公開されています。