タイパーインタビュー06:のんさん
この記事は、タイパーアドカレ2020、14日目の記事になります。
(前日の記事は、テルさんの「極限期のタイプウェル更新戦略」です)
今回は、RTC2018で4位の実績を持ち、国語R総合ZH・常用ZGなどの記録も出している、のんさんにお話を伺いました。
◆ ◆ ◆
――まず、歌謡タイピング劇場を始めたときのことを教えてください。
元々はハンゲーム内にあるチョコットランドをやっていて、そのゲーム内で少し行き詰まったときに、フッと歌謡タイピング劇場が目に入ったのが始めたきっかけですね。
それまでタイピングをしたことも全くなかったため、左手1本右手1本の人差し指打法で、キーボードを見つめながらやるスタイルで始めました。
歌謡タイピング劇場では部屋を作る際にタイプ量が「多め」「普通」「少なめ」から選ぶことができ、タイプ量少なめにすれば本当に初心者でも楽しむことができます。ただ最近はタイプ量多めの部屋がほとんどなので、初心者は少しとっつきにくいものになってしまったかもしれません。
私が始めた当時(2008年頃)は歌謡タイピング劇場(以下「歌謡」)がとても盛り上がっており、タイプ量普通や少なめの部屋も多く存在し、初心者のころから同じ実力の友達を見つけやすく、一緒に上達していける楽しみを感じやすかったです。私自身、常に同じような実力の友達を見つけながら、楽しんで上達していきました。
――はじめた当初はどれくらいプレイしていましたか?
当初は一日1時間くらいでしたかね。チョコットランドのほうが遊ぶ比率は高かったです。一日に何時間も遊ぶようになったのは、少し速度がついてタイプ量多めでも打てるようになり、自信が出てきたときからですね。
タイプ量多めが打てるようになると、一緒にプレイできる友達がすごく作りやすくなってどんどん楽しくなりました。
――はじめてからどれくらいで、タイプ量多めが打てるようになりましたか?
ゆっくりだったので、おそらく1~2カ月ですね。タイプウェルでいうと100秒切ったくらいの速度に近いかと思います。
その頃には、指も両手共に人差し指と中指の2本に増えていたと思います。それでも手元を見ながら画面を見ての繰り返しですね。いまだに歌謡中手元はちょくちょく見ていたり…
――その頃から手元を見ながら効率の良い運指を模索されていたのでしょうか?
そうですね。歌謡はいつも同じワードしか出てこなくて最適化が考えやすいので、毎回ワードが出る直前に「次のワードはこう打つのが一番いいんじゃない…?」ということを常に模索していました。それで使える指も自動的に少し増えていった形です。基本的に左2本、右3本までしか増えませんでしたが(笑)
――目標などはありましたか?
クリアしてみたい曲、友達とフルコンボしてみたい曲等あり、大きな目標となっていました。ただ一番モチベーションとなっていたのは、実力が近い友達より速く打てるようになりたい、ということでした。
歌謡タイピング劇場には「判定」というものがあり、文字を打った速度に応じて「PERFECT」「GREAT」「GOOD」「OK」があります。ライバル視している友達が長文のワードで「GREAT」を出したのに、自分がそのワードでは「GOOD」しか出したことがなかったりすると「くそ、絶対私もその判定出してやる!」と、とても燃えてました。
友達と打つのが楽しいから歌謡は続けましたが、速くなった要因としてはライバルの存在が大きかったですね。
――友達と打つ以外に、ソロでの練習や、何か特別な練習はされていましたか?
特別な練習方法は特にしませんでした。練習方法を考えるのは苦手なので、とにかく練習したいワード(曲)はソロで打ち込む!という考え方でした。
結果、ソロは普通の歌謡民より多くやったと思います。ソロでクリアしてみたい曲、ソロスコアであの人を抜きたいな、といった目標もあってちょうどよかったのもあります。
――歌謡タイピング劇場で身についたもので、特に今のタイピングに活きているものは何ですか?
私の運指はほとんど最適化でできています。この最適化はすべて歌謡タイピングで身についたものなので、活きるというより、私のタイピングは、歌謡タイピング劇場で出来上がっているものだと思っています。
歌謡タイピング劇場がなければ、例えタイピングに出会っていたとしても今の私とは全く別のタイピングスタイルになっていたと思います。
――歌謡タイピング劇場はトップスピードを鍛える上でも役立つと言われますが、ワードが固定されているのと、判定でその都度フィードバックがあるのが大きいでしょうか?
そうですね、そこはかなり大きいと思います。他の人がいい判定を出しているので自分も、と挑戦したのにうまくいかなかったとき、ワードが固定されている分、単純に自身の速度不足が明確になるので、「もっと速く打たなきゃ…」という気持ちが大きくなります。
あと判定がいいとエフェクトが少し派手になったりで、速く打てるとそういった気持ちよさもあったりします(笑)
――これから歌謡タイピング劇場を始めるタイパーに対して、何かアドバイスはありますか?
他の人とやることが楽しいゲームなので、とりあえず勇気を出して、どこかの部屋に突撃していってほしいです(笑)優しい人ばっかりのゲームなので、初心者にも優しく教えてくれるはずです。
歌謡タイピング始めるの怖いっていうフレーズをよく聴きますが、私からすると怖い部分なんて全くないので、怖がらずに手を出してみて欲しいです!
――ところで当時、歌謡タイピング以外のタイパーは認識していましたか?
歌謡タイピングをしている中で、何名かタイパーと呼ばれる人たちを絡みが発生した時期があるので、なんとなくは認識していました。その中でえるばさんにWeather Typingでボコボコにされたり、TypeShootで他のタイパーやぷんださんにボコボコにされたりしていた時期もありました。
――その頃には、歌謡タイピングの中でもかなり速いレベルになっていたのでしょうか。
友達にタイプウェルやってみてって言われて、ちょっとやるか~で「常用ZJ出せたー!」って頃なので、速いレベルになっていたと思います。それが2010年くらいでした。
――その後、2011年6月にタイパーオフに初めて参加されたのですね。
なんとなくツイッターを始めたらみこやんさんに補足され、そこからタイパーに見つかり始めたのが始まりで、のんびり活動してたんですが、急に「オフ会来ませんか?」とgummiさんに声をかけられ、なんで参加したのか自分でもよく分からないんですが、ノリで「参加します」と言っちゃったのが始まりですね。
ちなみにそのころ、私はテルさんも俺さんも存在を知りませんでした(笑)
――そうだったんですね(笑)そうすると、オフ会で実際にテルさんたちの打鍵を見て、かなり驚かれたのでは。
かなりびっくりしましたね…「ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド」(TOD)でしか打鍵は見ませんでしたが、別次元感がすごくて…私のアウェイ感がすごかったです(笑)キーボードショップにも行ったんですが、そこで交わされる会話もガチ勢すぎて、全くついていけなかったです。
――ちなみに、参加される前からご自分の運指が標準運指から外れていることには気づいていたのですか?
歌謡タイピング劇場をやっているときも結構指摘されてたので、気づいてはいましたね。ただオフ会ですごい好奇の目で見られて、自身の運指があまりに逸脱しすぎているのを実感したのは、そこが初めてだったかもしれません。
――そのオフへの参加がタイプウェルをやるモチベーションになったとのことですが、特にどう影響を受けましたか?
こんなにガチな世界が存在するんだ…っていうのを目の当たりにして、初めてタイピングをゲームではなく競技として見ました。そうすると自然とモチベーションが出てきて、タイプウェルを初めてちゃんとやろうって思えるようになりました。TODで手も足も出なくて悔しくて、ちょっとでも歯が立つようになりたいという思いもありました(笑)
――なるほど。それから5ヶ月後、2011年11月にタイプウェル国語R常用ZG、翌月には総合ZHも達成されたそうですが、当時の練習内容について教えて下さい。
タイプウェルは毎日2時間程度の打ち込みだったと思います。歌謡タイピングはもっと続けていたので、ほぼ一日中タイピング自体はしていました。
タイプウェルも基本はただひたすら打つでしたが、少し先が見えなくなると、5ミス制限や3ミス制限を3日ぐらい続けて解いて、を繰り返していました。
――かなり速いペースでの成長だと思いますが、振り返ってみて伸びた要因は何だと思われますか?
ライバル(paraphrohn)の存在ですね。タイプウェルを真面目に開始していた時期からほぼ同じペースで成長していて、本人からも、ライバル視しているのに近い発言を受けていたので、「こいつには負けられない!」という意識がとても強くあり、タイプウェルにのめり込むことになりました。
――その後、総合ZHを達成してからはタイピングから離れていたのですね。
完全に離れてしまっていましたね…2年くらいでしょうか。指も完全になまっており、まれにタイプウェルを起動してもZJいかないくらいだった記憶があります。
――それから、タイピング関連の仕事へ転職したのをきっかけに、ホームポジションを覚えさせられたとのことですが、1年くらいはホームポジションだけで打っていたのですか?
はい、ホームポジションのみでした。一回戻してしまうと、二度とホームポジションをしたくなくなりそうだったので(笑)ギリギリ常用ZHが出るくらいまでは、ホームポジションのまま頑張りました。
継続した理由は、仕事上の義務ですね。以前の運指のまま仕事をしようとしていたところ、その運指で大丈夫なのかと心配されてしまったので(笑)結局勝手にホームポジションは卒業してしまいましたけどね…。
結果的にホームポジションで得られるものは多かったので、とても感謝しています。
――ホームポジションで得られたものは、具体的に何でしょうか?
安定感ですね。元々トップスピードはあってもワーストスピードがとても遅く、ZGやZHが出るかどうかは運ゲーだったのが、運ゲーではなく、実力次第に変わりました。以前のままでは、RTCなど到底出場できていませんでした。
また、以前は「この運指が絶対いいんだ」と思っていたのですが、そうではなくて「絶対の運指なんてないんだな」という知識が得られたのもよかったです。
――今はどの指を使ってタイピングしていますか?
現在は左右ともに人差し指から小指まで、4本ずつ使用しています。ただホームポジションからは割と遠く、いわゆる自由運指になっています。
――タイパーアドカレ2018の記事で、状況に応じて自由に運指を変えると書かれていましたが、それは意識して変えるのでしょうか、それとも状況に応じて無意識に変わるのでしょうか。
両方ありますね。基本的には無意識に変わりますが、例えばWeather Typing(WT)で対戦しているときなどは、対戦相手によって「この人の場合はこっちの打ち方じゃないとワードが取れないな…」と考えてわざと打ち方を変えたり、「今日はこっちのほうが打てる気がする」と意識的に変えることもできます。
そういったことを考えるのは大体先読みしている段階ですが、途中で運指の組み方を失敗してしまうと「こっちの打ち方に修正しよう」と変更したり、WTだとワードの接戦具合で「あ、ここをこうしないと間に合わない」と判断するときもあります。
――運指の組み立てについて、対戦中以外にも、何か意識的に練習されることはありますか?
基本的には自然と組み立てられていくものなので練習することはありませんが、1人でタイピング練習をしているときに「あ、この打ち方やってみよ」といつもと違う打ち方を試してみることはまれにあります。
――それでは今後のタイピングについてお聞きしたいのですが、これからやっていきたいこと、あるいは目標などありますか?
私は企画等はできないのですが、なるべく多くのイベントに参加することによってタイピング界を盛り上げることに少しでも貢献できたらなと考えています。
また、現状の自分に満足せず、R常用ZFを目指して頑張っていきたいと思っています。
――R常用ZFを出す上で、一番ボトルネックになっている部分は何だと思われますか?
指の移動距離ですかね。今のままの運指だとどうしても指の移動距離が長く、無駄な動きが多いんです。それに比べて常用ZFを出してる方達の指の動きはとても洗練されていると感じます。
運指を見直す、もしくは親指を使う等の工夫を講じようとしています。
――今まで運指を組み立てる時は、指の移動距離以外の何を重視してきましたか?
タイプウェルで運指を考える際は、あくまでそのとき打つ単語の最適化を優先しています。次の単語のことも少し考えてはいるのですが、そこで考えているのは「加速のしやすさ」になっています。その意識を「指の移動距離」にする必要があるかなと感じています。
――なるほど。指の移動距離が長くても、加速はできるのですか?
「移動距離が長い」と「加速しやすい」は両立しますね。
――そうすると、移動距離が長い今のスタイルでもある程度の速度は出せるけれども、安定性などに問題があるということですか?
指の移動が激しいので少なからず安定性が不安になるのと、「指の移動が短時間で済む」メリットには勝てていない感じがしますね..。
そもそもZFを出している方たちは、次の単語への移動距離・移動時間はほぼないと思うので、そこを加速で追いつこうとするのではなく、同じステージに立つことが必要なのかなと。
――それでは、最後に改めて意気込みをお聞かせください。
いろんな方と接して自分を高めていければと思っているので、もしWTや歌謡等、一緒にやってくださる方がいたら気軽に声をかけてください!一緒に成長しましょう!
また、次回REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIPがあるときは出場しようと思っていますので、よろしくお願いします!
◆ ◆ ◆
のんさん、長時間のインタビューありがとうございました!
明日のタイパーアドカレ2020はまだ空欄となっています。遅れても登録できますので、ぜひ参加しましょう。
また明後日16日は、タイパーインタビュー第7弾として、タイパー最古参のお一人であるdoraguさんへのインタビュー記事を公開予定です。タイピング界黎明期のお話を中心にお話を伺いましたので、そちらもぜひお読みください。