タイパー・インタビュー

タイパーアドカレなどで行ったインタビューまとめです(かり~)

タイパーインタビュー14:とるてぃさん

 本記事はタイパーアドカレ2021、6日目の記事です。
(前日の記事はたのんさんの「Warriors of Typing参加者のEloレーティングを算出してみた!」 です)

 

 第14回のインタビューでは、タイピングゲーム「CUBE」を制作された、とるてぃさん(@toruthiya_univ)にお話をうかがいました。

◆ ◆ ◆

――まずはとるてぃさんのタイピング歴について教えてください。中学生の頃、毎日パソコン入力コンクールで全国一位を獲得されたとのことですが、そもそもタイピングを始めたきっかけは何でしたか?

 もともとは小学三年生の頃に寿司打を始めたのがきっかけです。仲の良い友達と競いあいながらやっているうちに、気づいたら上位にランクイン出来るようになっていきました。
 中学生の頃にタイピングの大会を見つけて、これなら全国一位が取れるかもしれないと思って参加しました。一回目は入賞だったのですが、二回目で優勝することができました。

 

――他にもタイピング練習に使用していたソフトがあれば教えて下さい。

 寿司打がメインでしたが、他に歌謡タイピング劇場というものがあって、それは毎日のようにやっていました。あとタイプウェルは一日何百回と挑戦していました。他にも夜の森タイピング、Ozawa-Ken、世にも奇妙な街とかが結構好きで、それもちょくちょくやっていました。また以前はTyping Tubeもやり込んでいました。

 以前は歌謡とタイプウェルとかではpizzapotatoって名前で活動していました。タイプウェル国語Rの基本常用語は特にやり込んでいて、頑張った記憶があります。

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 基本常用語でZGを出したのは2016年か2017年ごろですね。タイプウェルに記録を最後に送ったのが2017年の1月になっているので、たぶん基本常用語を更新したのは2016年の秋頃だったと思います。

 

――当時、タイピングを練習するにあたって意識されていたことはありますか?

 特に何かを意識していた記憶はないですね... 当時小学生か中学生だったこともあり、正確性とかもあまり気にしないで、ただゲームで遊ぶ感覚でやっていた記憶があります。
 ただ、ネットで「一日10万打鍵練習する」というタイパー?の言葉を見かけたことがあって、それは印象に残ってました。打鍵カウンターとかをPCにいれて、1日10万打ぐらいを意識していた時期はありました。

 

――当時は競うことよりも、自分の記録を更新していくのが主なモチベーションだったのでしょうか。

 そうですね!特にタイプウェルに関してはそれが大きいかも知れません。Zタイパーとかオールラウンダーとかいろんな称号があって、それを獲得していくのを楽しんでいました。タイプウェル以外のゲームは純粋にゲームとして楽しむような気持ちでやっていましたね。
 そもそも当時父親と母親の管理が厳しくてインターネットに触れられなかったので、当時はあまりタイパーの方を知らなかったです。タイプウェルに熱中したのもオフラインでもできるからこそ、みたいなところはありました。

 

――その後はだんだんタイピングから自然と離れていった感じなんでしょうか。

 中学生の頃は部活をサボっていたんですが、高校生になってちゃんと部活とかにも出るようになって自然と時間がなくなってしまいましたね。

 

――GANGASが更新終了した頃には、もうタイピングから離れていたのですか?

 そうなんです!更新終了してから1年ぐらい経った時期にふとTwitterでGANGASのことを調べてみたら更新終了という情報が出てきて、とても驚きました。最後の更新のときにはいろんなタイパーの人が記録送ってたので自分も記念に送ればよかったな...ってちょっと後悔してます。

 大学生になると、大学でゲーム作りとかをやっているサークルがあって、そこでの活動が楽しくて、段々と制作側にシフトしていったという感じです。

 

――タイピングソフトを作りたいという気持ちは前からお持ちだったのでしょうか。

 ん―微妙なところです。小学生の頃から実はゲームづくりが好きで、Excelで動くゲームをたくさん作っていました。まだ公開していないゲームや完成していないゲームもたくさんあります。

 その頃から当時やっていたタイピングゲームに対して、もっとこうすれば面白くなるのにとか、こんなゲームがあったら面白いなみたいなアイディアはあったのですが、小学生の技術力だったのでなかなか実現しなくて。公開できなかったのはインターネットになかなか触らせてもらえなかったというのもあります。Excelゲームを題材に選んだのもその影響です。

 高校の時はゲームづくりのことは忘れていたのですが、大学に入ってから先程申しましたサークルの影響でゲームづくりの楽しさを思い出して、十年弱ごしぐらいにチャレンジしてみたのが今回のゲームです。

 

――CUBEをひと目見て、ビジュアルや音楽など雰囲気に統一感があり、ゲームとしてもすごく洗練されている印象を受けました。デザイン面で意識されたことや、なにか参考にしたものなどはありましたか?

 ありがとうございます!デザイン面はかなりいろいろなものを参考にしていて、パッと思い出せるだけでも「心電図」「車のメーター」「カラオケ」とかですかね。ネットでとことん画像検索して、出てきたものを参考にして制作しました。楽曲も以前ハマっていた音ゲー(Arcaea)があって、それに雰囲気を寄せるようにしています。

 

――楽曲もご自身で作られていますが、作曲は以前から趣味でされていたんですか?
 曲作りを始めたのは大学に入ってからです!以前から音楽経験はあったのですが、作曲をしているのはここ1,2年ですね。

 

――少し話が脱線するのですが、楽器経験がタイピングに活きたと感じることはありますか?

 どうなんでしょう。4歳のころからバイオリンを習っていて、毎日そこそこ練習していました。そのおかげで特に左手とかが細かく動くようになったといえばなったのかもしれませんが、本当のところはよくわかりません。

 ピアノは中学生の頃少し趣味で弾いていました。即興演奏とかが好きでしたね。ただ、ピアノは時期的にもあんまり関係ないとは思います。

 

――なるほど、ありがとうございます。それではCUBEの話に戻りますが、タイピングの部分についても、文末のnnの処理や、TypistModeで"silya(しゃ)"のような入力を受け付けないようにできるなど、かなり細かいところまで配慮が行き届いていますね。キー入力の実装などの面で、特に苦労されたことはありますか?

 最適化の仕組みみたいなのは、小学生の頃にExcelで作成したタイピングゲームのときに同じようなものを作っていたのでそれほど苦労はありませんでした。強いて言うならn←→nnの最適化は公開直前までちょっとバグってました。公開前に気づいてよかったです。

 ちなみに、nnの処理とか"silya"の設定とかは全て自分が昔タイピングゲームをしていたときに、「これ欲しいな」と思った機能です!特に”silya”の方は自分がゲームをプレイしていて何度か苛立つことがあったので...

 

――CUBEでは他にも、データ分析機能がとても面白く感じました。特に力を入れたところはありますか?

 データ分析機能はCUBEの目玉機能というか、一番力を入れた部分です。全体的に、今まで見かけたことがないデータ分析機能を詰め込んだのがあのゲームになります。サイトにも書いたのですが、中でもキーの方向別の加速度は数学の知識を総動員して頑張りました。
 他にはミスの原因分析です。これは自分がタイピングゲームをする中で「欲しい!」と思った機能なので、可能な限り正確にミスの原因を分析できるように、最新の論文とかも読んだりしながら詰めていきました。安定性の指標とか文章生成も頑張ったのですが、特に頑張ったのはこの2点ですかね。

 

――ミスは原因別にかなり細かく分析されていますが、ああいった分析は以前タイピングをされていたときから意識されていましたか?

 なんでミスするんだろうと原因が気になったことはありますが、結局その時はあまり原因がわかりませんでした。せっかく自分でタイピングゲームを作るのなら自分で自分のタイピングデータを分析してみたいという欲求もあり、その結果ああいう機能が生まれたのかも知れません。

 

――キーの方向別の分析も、とても新鮮で面白いと感じました。この機能はどのように思いついたのですか?

 このゲームを作る前、既存のゲームを下調べしていたときにキー別の速さを表示しているものを見つけました。しかし、例えばJキーとKキーの速さにはある程度相関があると思うのですが、同じぐらい離れたJキーとIキーだと結構得意不得意も変わって来ると思って。キーの場所ももちろん得意不得意があると思うのですが、それ以上に前後のつながりが分析には重要なんじゃないかと思ってああいう機能を作りました。

 やっぱりある程度タイピングが速くなると、指の動き単体というよりも、前後の流れの中でいかに流れを止めずに打つことができるか、というのが勝負になるような気がします。本当はキーの並びから似たような動きをクラスタリングしたりしてもっと複雑な分析をしたかったのですが、私の技術的な制約もあり結局連続する2キーの方向分析に落ち着きました。

 

――ご自身でプレイをしてみて、分析機能の癖などで気づいたことはありましたか?

 技術的な都合上どうしても「外れ値」のようなものが出てきてしまいます。リザルト画面では相対的な加速度を表示しているのですが、例えば加速度がやたら速いキーがあるとそのキーだけ真っ赤になって残りのキーの加速度がプラマイ0付近に集中してしまうことがありました。ただ、どの程度を外れ値として扱うのかが難しく、結局これは癖として残っていますね。いつか改善できたらいいんですが...

 

――アチーブメントもかなり難易度が高く、上級タイパーでも苦労しそうな難易度になっていますね。CUBEの難易度設定で意識したことがあれば教えて下さい。

 もちろん、とことん高めを意識しています笑
 自分の肌感覚として、トップタイパーが楽しめるような難易度がどれぐらい、というのはなんとなく分かっているので、そこに合うように意識しました。既存の攻略系のタイピングゲームだとすぐに攻略できてしまうことが多かったので、トップタイパーでもある程度時間をかけて楽しめるような難易度を目指しています。

 

――ちなみにランキングを見ると、上位のランクに「Iwa」などがありますが、由来についてうかがってもよいですか?

 これは、日本神話ですね。アマテラスとかイザナギとか、そういうところから来ています。全体的に英語でおしゃれな感じを意識したのですが、やっぱり何か日本発のゲームならではというか、日本のよさみたいなものをゲームに取り入れたかったのでこうなりました。

 

――今後のアップデート予定で何か考えていることがあれば教えて下さい。

 まずはバグの報告をいくつか頂いているので、そこを直したいですね。ワードのミスもいくつかあるようなので、そこは大会が終わったらまっさきに直すと思います。

 大幅な機能の追加は今の所特に考えてはいませんが、文章生成のバリエーションをちょっと増やしたり、かな入力への対応も時間が許せばやりたいと思っています。

 

――CUBE以外にも、タイピング関連でこの先なにか考えていることはありますか?

 新しいゲームをもっと作っていきたいですね!Neutralさん(寿司打の運営サイト)のように、タイピングのゲームをいっぱい作って並べられたらと思っています。そのときには、全てのゲームでタイピングのデータを保存できるようにして、保存したデータを手元で、CUBEのように分析できるようなツールを作ってみたいですね。

 

――とても面白そうですね、楽しみにしています。それでは最後に、何か言い残したことがあれば。

 本格的なゲームを作るのは初めてなので、まだまだ改善すべき点はあると思いますが、CUBEをぜひ楽しんでもらえたら嬉しいです!他のゲームにはない、トップタイパーが欲しがるような機能を満載したつもりです。
 またこれからもゲームを作っていくつもりなので、その時はぜひよろしくお願いします!

 それから、今回自分のタイピング歴とかを振り返ってみて、Typing Tubeとかまたやりたいなって思いました。最近は以前よりも少しだけ時間に余裕が出てきたので、自身もタイピングをぼちぼちやっていきたいです。


◆ ◆ ◆


 とるてぃさん、突然のお願いにも関わらずインタビューをご快諾いただきありがとうございました!

 

 ちなみにCUBEは「ゲームクリエイター甲子園」の応募作品で、結果発表の12/18ギリギリまで「応援」投票が可能とのことです。もしまだ未プレイの方は、ぜひプレイしてみましょう!
(以下のリンク先より「この作品を応援する!」をクリックすることで応援ツイートができます)

CUBE│ゲームクリエイターズギルド公式サイト

 タイパーアドカレ2021、明日7日の記事はたのんさんによる「TOD対戦虎の巻 ~今日から使える基礎知識~です。
 今も東京都内や京都に数台残るTODですが、知識次第で多少のタイピング速度の差が補えるところは、「ゲーム」としての魅力の一つと言えます。これまでTODに触れる機会がなかった方も、ぜひご覧ください。