タイパーインタビュー08:凪沙さん
この記事はタイパーアドカレ2020、18日目の記事になります。
(前日の記事は白狐さんの「タイパーが SOUND VOLTEX を勝手に布教する」です)
今回は、新進気鋭の英文タイパーである凪沙さん(@KawamotoNagisaT)にお話を伺いました。
◆ ◆ ◆
――凪沙さんは、現在、英語タイピングをメインにされているんですよね。記録など教えて下さい。
むしろ最近は英語しか打っていません(笑)
記録は、
e-typing腕試し英語:726
TypeRacer:bestrace204WPM textbest140WPM↑
です。TypeRacerを主に打ち込んでます。
(あとTyping Tubeの英語譜面をよく打ってます)
――タイピングを覚えたのはいつ頃ですか?
初めてPCを触ったのが12年ほど前(当時中1)で、当時塾で先輩や講師が「特打」をやっているのを見て、その時に遊ばせてもらったことが初めてでした。当時は本当にゲーム感覚で遊んだだけだったので、「特打」自体はすぐやめてしまいましたけど...
中学生のころから自由にPCを使える環境だったので、かなりキーボードを触る機会は多かったと思います。しかし当時はタイピングを極めたいと考えたことはありませんでした。
――それでは、本格的に練習を始めたのはいつですか?
4年前です。その頃プログラミングを学んでいたのですが、とりあえずサンプルのコードを打って実行するという機会が多かったんですよね。その時にもっと速くタイプできたらなーと思ったのがきっかけです。
そこでe-typingやTyping Tubeに行き着きました。
――始めから英語専門だったのですか?
はじめは日本語しか打てませんでした。英語自体嫌いだったので(笑)
――日本語入力の練習はどれくらいされていたんですか?
打っていない期間も含め、約2年ほどとなります。
e-typingの記録は570程度だったと思われます。
――そこから英語をメインに切り替えたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
一番のきっかけとなったのは日本語入力の成長の壁にぶつかっていたことです。どう頑張ってもe-typingで550付近の壁を越えられなかったんですよね。
そこで気分転換に英語タイピングに手を付け始めた感じです。当時成長を感じられていなかった私にとって、打てば打つほど伸びるという感覚がとても新鮮で楽しかったです。
――ちなみに日本語入力時代を今から振り返ると、当時足りなかったものは何ですか?
当時の私は、練習に対しての向き合い方が間違っていたんです。とにかくたくさん打っていればいずれ伸びると考えていました。スコアや、Key/sec、ミス数などを数値化して目標としていたのですが、実際にその目標を達成するための具体的な方針もなく、ただ闇雲に打っていたんですね。
ただ打っているだけでもある程度までは記録は伸ばせるのですが、一定のラインの壁で頭打ちになってしまうというのがタイパー界の構図だと考えています。その壁を超えるには、意味のある練習を意識的に取り入れていけないと無理だと経験的に感じています。
――凪沙さんが英語タイピングを始めて、そういうことを考えたきっかけは何ですか?
自分の手元を初めて撮影して、手元を知ってしまった時ですね。当時はかなり衝撃でした。
(参考リンク:深海少女 英語 タイピングしてみた。[typing-tube] - YouTube)
撮影した時の心境としましては、「今の自分はこのスコアが限界で、きっと誰もが驚く素晴らしい運指をしているに違いない」と本気で考えていました。しかし現実はそんな甘いことはなく(笑)手元を見ると何が自分に足りていないのかが見て取ってわかるんですね。
そこから、手元からの情報をヒントに常に具体的な目標を持って練習に取り組めるようになったんです。
――凪沙さんはどのように手元を撮影されていますか?
僕が撮影を開始した当初は、スマホをモニター上にガムテ―プで括り付けて撮影しました(笑)現在は、上左右の3方向から撮影しています。上からでなく、いろいろな角度から撮影することで、見えない部分の粗が見えてきたりします。
自分の手元を見たことない人は、新たな発見が絶対あると思います。一度は試していただきたいです!
――具体的に、凪沙さんご自身が撮影して気づいたことはどのようなことがありますか?
例えば、先程の動画の右親指を見ていただきたいんですけど、他の指が動いている間パーのポーズになっているんですよね(笑)。 どうせならこの指を生かしてやろうと考えた結果、b n m , を右親指に割り当てるという今の運指に行き着いたわけです。miriさんのインタビューを見たから取り入れたとかそんな理由ではありません(笑)
――今では右親指だけでなく、左親指も打鍵に取り入れているそうですが、そのあたりのことも詳しく聞かせてください。
今は左親指を x c v に割り当てています。
前提として、日本語入力と比べ、英語入力だと c v キーの打つ頻度がかなり増えるんですよね。となると c v 周りの最適化も考えなければならず、当初は c v に右人を割り当てて最適化していました。しかし、次第に限界を感じはじめまして、現在のように親指を導入するようになりました。人差し指で c v を取ろうとすると手全体を捻る動きになるため、前後の運指に影響があるのが嫌なんですよね。
――左親指の運指は一ヶ月くらい練習されたとのことですが、今はスペースキーとの併用も問題なくできるのでしょうか。
問題なく併用できています。しかし、今後はスペース自体を右でも刻めるようにしたいなとは考えていますね。
例を挙げますと"you've come"と打つ際に、「v→スぺース→c」と左親指担当が並ぶんですよね。この際にかなり減速してしまうので、先読みを駆使して、c v あたりと隣接するスペースは右親指に振ってあげようとは思っています。
――凪沙さんはキーボードのカスタマイズにも力を入れているかと思います。そのあたりのこだわりもぜひ教えて下さい。
かなりこだわっていますね!会社にキーボードを持っていくのですが、席に来る人来る人クエスチョンを投げてきますね(笑)
一番愛用しているキーボードはこんな感じです。
まずこだわっているのが、親指で担当するキーを反対に取り付けていることです。キーの面が親指側に向くようになるため親指使いのタイパーは幸せになれます。(親指を使ってないタイパーさんも、スペースキーの反転を試していただきたいです)
あとは下段を親指で取る際、スペースキーを巻き込まないようにスペースキーをわざとちっちゃいものに変えたりしています。
他にも、REALFORCEにメカニカルキーボードのキーキャップをはめられるよう改造したりしてますね。タイパーならREALFORCEを愛用している方も多いと思うのですが、そもそもキーキャップに種類がなくこだわりを出しにくい部分かと思います。しかしメカニカルキーキャップをつけられるようになると、様々な形状のキャップをはめられるようになり、打鍵感を極めることができます。おしゃれもできて一石二鳥です!
メカニカルキーボードのキーキャップには、この画像のように形状に種類があるんです。
REALFORCE RGBならメカニカルキーボードのキャップは直挿しできるのですが、他のシリーズをお使いの方は、以下のような専用のアダプタへの差し替えが必要になります。
(参考リンク:Adapter-X | 遊舎工房)
もしやる際は、メーカー保証対象外となりますので、自己責任でお願いします。
――荷重を55gにしている理由は何ですか?
実はREALFORCEの荷重55gに加えて、追加で+10gのスプリングも入れてたりしますw
(参考リンク:Amazon | 静電容キーボード適用 增圧スプリング(+10g))
理由としましては、巻き込みによるミスタッチを減らしたいという観点からです。あとは、miriさんも同じように回答していたと思うのですが、キーが押し込まれた状態から戻ってくるまでの反動を利用したいからですね。
――反動を利用するのは、英語に多い同一キー打鍵対策にもなっているのでしょうか?
確かに同一キー打鍵の対策にもなっているのかもしれません。あとは単純に速く跳ね返ってきたほうがまた次すぐ打てるよねっていう脳筋的な考えでもあります(笑)
――英語配列のキーボードを使用するメリットは何ですか?
単純にUS配列が好きだからですね。日本の配列だと ' (アポストロフィ)を打つ際の入力は「Shift+7」だと思うのですが、US配列だと ' を単打で打てるので、それだけでかなり差が付きますね。英語入力には有利なんです。
あとはもともとスペースが大きい分、スペースキーをちっちゃいのに変えると、下段が親指で打ちやすくなるんです。
――US配列は、元々かめおさんに勧められたそうですね。かめおさんにはそれ以外にも、かなり影響を受けたそうですが。
かめおさんにUS配列を採用したほうがいいと促されて、実際US配列に変えただけで当時はエタイの記録が30近く上がった記憶があります(笑)
かめおさんの影響はかなり大きかったですね。Typing Tubeなどのサイトで、常にスコアを意識していました。当時かめおさんには到底及ばないほどの差があったのですが、Typing Tube内でいうかめおさんのスコア-10点の記録を常に目指していました。
そのほかにも、英語でよく打つ過去形の形ed(34) lo(98) hy(67) tr(43)等、英語特有の最適化のパターンは当時かめおさんと話していた中で生まれたものです。
――現在はTypeRacerがメインとのことですが、いつから始められましたか?
TypeRacerは英語を打ち始めて半年ほど経ってから(一昨年の8月くらい)かな...。TypeRacerのいいところは、やはりミス修正があるところですよね。乱打したくなってしまう気持ちを抑えられます(笑)
あとは、文主体のタイピングでありながら、文にバリエーションがあることです。もともと英語タイピングを始めるまで英語は大の苦手だったのもあり、勉強もかねて英語タイピングをやっているところもあるんです。Weather Typingや10FastFingersもタイピングの練習としてはいいのですが、英語に慣れるという点から逸れてしまっているんですよね。これはTyping Tubeにも通じる部分です。
――では現在のタイピングの練習時間や時間配分を簡単に教えて下さい。
練習としてのタイピングは平日2~4時間、休日4~12時間です。 この時間はひたすらTypeRacerやTyping Tube、英語小説などをタイピングしています。
またこの時間の他に大きな割合を占めているものが、仕事としてのタイピングです。現在僕はプログラマーとして働いているのですが、ひたすらキーボードを打っている日が多いです。現在は在宅の関係もあってより頻度が増していますね。この時間に、加圧150gのキーボード(自作キーボードキットで作成しました)をバコバコ打ってますねw
――加圧キーボード導入の意図は何ですか?
先程も述べた通り、僕は加圧が重ければ重いほどミスタイプが減り、早く打てると思っていますので、ゆくゆくは競技としてももっと重いキーボードに変えたいと考えています。そのために指を鍛えている感じですね。
あとは単純に指の分離にも効果があるかなと。ギターやピアノを演奏している人が持っているフィンガートレーニング器具だと思っていただければ!
――実際に指が動きやすくなりましたか?
だいぶ動きが良くなったことを実感しています。まず今使っているRealForce55g+αがめちゃくちゃ軽く感じます(笑)
あと先ほどかり~さんも取り上げていたように、英語タイピングって同キー連打が多いんですよね。 しかも小指付近に多いのがまた...(call,happy,lookこの辺ほんと嫌です)。でもこの150gのキーボードを普段打つようにしてから、この辺への苦手意識は当初よりも格段に減りました。
――タイピングをやっていて楽しいことや、モチベーションの源は何ですか?
それはもちろん記録の更新です!僕も例外なくそうですね。
あとは僕の場合だと、英語そのものを習得できているということですね。日に日に読めるようになっていることを実感できて楽しいです。あとは、そもそもエンタメとタイピングを紐づけて練習していることが多く、英語カバー曲やノベルゲームなどと一緒に娯楽の一環として楽しんでいます。
――今後の大きな目標を教えて下さい。
まずはe-typing英語かTypeRacerで、日本人1位を奪取したいです!(本気で狙ってますw)
大会などに踏み込む勇気はないですね。私あがり症なのでw
――Interstenoの大会への参加は検討されていますか?
Interstenoって多言語のやつですよね...
――Interstenoにはオンライン大会とオフライン大会の2種類があります。
Interstenoオンライン大会は毎年春に開催されて、母国語部門と多言語部門とありますが、「多言語部門」と言っても必ずしも17言語必ず打つ義務はないので、日本語と英語だけで参加しているタイパーも多いですよ。10分間の打鍵速度と正確性を競う競技で、アメリカのSean Wronaなどトップクラスの海外タイピストと同じ土俵で競うことができます。
またInterstenoオフライン大会は2年に一度、主にヨーロッパの都市で開催されていて、英文で30分の打鍵速度を競うことになります。現状、最大規模のオフライン世界大会ですね。今は世界レベルで英文勝負できる日本人があまりいないので、凪沙さんをはじめ、若い皆さんには積極的に挑戦してもらいたいと思っています。
Interstenoオフラインも少しずつ視野に入れていきたいですね。ただ海外の方のTypeRacerの記録を見てみるとまだまだ足元にも及んでいないと思うので、まずは日本人としての記録を塗り替えた後の目標になってくるのかと思っています。
――一方で、先日Typing Tubeのリアルタイム対戦を行っていましたが、そういった活動は今後も続けていく予定ですか?
勿論続けていく予定です!初めてあのような企画を開催してみたのですが、初開催にもかかわらず10人以上もの方々に参加していただけて、本当に感謝しています。
今後は、あまり自信のないタイパーさんでも気軽に参加できるように、ハンデ機能などそもそものシステムを変えていけたらと思っていますので、是非参加していただけますとうれしいです。
――それでは長くなりましたが、最後に、今後のタイピング活動への意気込みを聞かせてください。
目指せ!打倒Sean Wronaということで今後もストイックに記録を伸ばしていけたらと思います。
◆ ◆ ◆
凪沙さん、インタビューありがとうございました!今後の活躍も期待しております。
明日のタイパーアドカレ2020の記事は、第3回のインタビューでもお話しいただいたmayoさんによる「TW漢字 ~ローマ字読みから漢字読みへの転向~」の予定です。そちらもぜひご覧ください。