タイパーインタビュー03:mayoさん
この記事はタイパーアドカレ2020、7日目の記事になります。
(前日の記事はdqmaniacさんの「老化とタイピング」です)
インタビュー第3弾の今回は、タイピング同盟ぁ~んの代表でもあり、TypeRacer対戦会の開催など様々なところで精力的に活動されつつ、自らも日々タイピングで研鑽を積んでいるmayoさん(@mayo_tp01)にお話を伺いました。
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―――まず最初に、タイピングを覚えたきっかけを教えて下さい。
小学生のときに父親が特打を買ってきて 「お前もブラインドタッチを覚えなさい」と言われ、半強制的に練習させられたのが始まりですね。最初はなかなかキーを覚えられなくて苦労しましたが、やっていくうちにどんどん打てるようになり、気がついたら楽しくて自主的に毎日打っていました。
日に日にゲームで倒せる敵が増え、ランキングの記録も上がり、自分の成長が自分で確かめられるのが楽しくてしょうがなかったです。
―――その後、特打はどれくらい続けましたか?
特打は小学5年生から中学生になるくらいまで続けました。あとはたまにジャンプランド(2009年まで集英社が運営していたWEBサイト)のカリン塔や天下一武道会でタイピングをしていました。
ガチでタイピング練習に打ち込んでいたというよりは、ちょっとしたゲーム感覚で打っていましたが、その頃にはタイピングにも結構自信がついていましたね。
―――その後バトタイプに出会うわけですね。
初めてバトタイプ(バトタイ)に出会ったのは2006年で、当時は高校生です。なんとなくタイピングの対戦ゲームをやりたくなり、検索していてたまたま見つけたのがバトタイでした。とりあえず覗いてみるかと入ってみて、そこにいた人と対戦してみたら瞬殺されて「あ?!!!不正か?!!」と愕然としました。その対戦相手が、タイピング同盟ぁ~んの創設者で初代代表のジンさんです。その頃の自分の速度は平均100~150ぐらいでした。
そこまで対戦経験も豊富ではなかったのでタイピングではそうそう負けないと思い込んでいたら何度挑んでも瞬殺されて、それが信じられず悔しくてそこから毎晩バトタイに張り付きました。
バトタイを見つけた翌日、また行ったらジンさんがいて、今度は名前にジン@ぁ~んと変な文字がついていました。「何だ変なの」と思いながら深くは突っ込まず、とりあえず「今日も連戦よろしくお願いします!」と声をかけて連戦してもらったのですが、結局1回も勝てないままぼこぼこに負かされ、対戦が一段落したところでジンさんから「ぁ~んっていう団体作ったんだけどよかったら入らない?」と誘われました。
ぁ~んという団体名がどう考えても怪しくて「え?何こわい」と最初は思いましたが、話を聴いているうちに、同じタイピング好きな者同士で競い合い伸びていくという方針、毎晩対戦しようぜ!!!!ってノリがたまらなく魅力的に思えて即入会しました。
その日以降は毎日夜になったらバトタイに集合して何百戦と連戦して、日によっては朝まで打ったり話したりしていました。
―――ちなみにバトタイ以外のソフトは何かやっていましたか?
e-typingを始めたのがバトタイを始めてからだいたい10日後で、初回登録時のスコアは腕試しで300(第262回 春のことば)でした。(参考:タイピング歴 - -m-Typing Note)
―――当時はまだTwitterもなかったと思いますが、他のタイパーと話していたのは主にバトタイのチャットですか?
バトタイの対戦部屋でのチャットや、あとはMSNメッセンジャーでのやりとりが多かったです。当時のバトタイには同じぁ~んの仲間や常連も多くて、少ない時で3~5人、多いときで10人以上いたような気がします。あらかじめ連絡をとらなくても、バトタイに行きさえすれば誰かがいて対戦できるという最高の対戦環境でした。
バトタイを始めてから受験が本格化するまで、半年ぐらいは毎日そんな感じでした。高校生で授業中眠くても、とにかく連戦したい気持ちが強くて、寝不足承知でずっとバトタイに通っていました。
それから、流石に受験のタイミングで一度離れざるをえなくて、それでも我慢できず塾をさぼって、一日中ネットカフェでバトタイをやっていたこともありました。
受験期間中は受験に専念して(母親にネットのケーブルコードを隠されてネットにも繋げない状態でした)、受験が終わったと同時ぐらいにまたタイピング復帰しました。
そこからはまたバトタイ漬けですね。
―――タイプウェルもその頃始められたのですね。
2007年に新しいノートパソコンを手に入れたタイミングでタイプウェルを始めました。バトタイのタイパーさんにオススメされたのがきっかけです。
タイプウェル国語Rの初見記録は常用SB、カナXJ、漢字B、慣こSAで、最初は打ち切るのも苦労するレベルでした。バトタイはスペースキーを使わないので、まずスペースを打つことに慣れるまで相当苦労しました。
GANGASのランキングを見ても自分のレベルが低すぎていまいちよくわからず、ただバトタイでお世話になっているタイパーさんたちもランキングにいるのをみて凄い人達なんだなと改めて思いました。
当時のバトタイには、zak(mullerさん)やようすけ会長とかいましたね。
2007年夏に、K-1 MAX TYPING(2008年10月閉鎖)というタイピングの対戦サイトを知ってしばらくハマり、そのK-1で知り合った人に誘われて、初めてWeather Typing(WT)のロビーに行きました。
―――はじめて行ったWeather Typing(WT)ロビーはどうでしたか?
なんというか…人がいっぱいいて、めちゃくちゃ怖かったです。
当時はひろりんごさんやぷんださんを始め、いわゆるWT民族の怪物たちがずらりと勢ぞろいでした。噂で凄い人たちとは知っていましたが、会うのも話すのも初めてで、ただただ緊張してました。
バトタイで見かけたことはあっても直接絡むのは初めてで、洗礼を受けてここでもぼこられました。当時WTの皆さんは通話しながら話しつつ対戦しつつというのがデフォルトみたいで、「対戦するぞ!」「通話するぞ!」って流れになって、気がついたら初Skype通話が 10人ぐらいでそれはもう強烈でした。
通話はなかなか慣れず、バトタイしか世界を知らなかったような自分なので結構びくびくしていましたが、徐々にあの怪物の巣窟のような雰囲気にも慣れてきて、バトタイ、K-1、WTに通うようになりました。
WTもバトタイ同様に土日は夜~朝方までとか連戦していました。WTロビーも常に大勢でにぎわっていて、多いときは20人以上いたり、いわゆるWT常連の人、ひろりんごさん、ぷんださん、しゅんぽっぽたちとか、常にログインして住んでいたという印象です。
―――その頃に、タイピング同盟ぁ~んの2代目代表になられたのですよね。
ぁ~ん2代目代表になったのは2007年6月で、初代代表のジンさんが私生活の事情でネットから離れることになり、mayoが代表をやってくれと頼まれて、最初は不安で悩みましたがぁ~んを残したい、続けたいと思い引き受けました。
―――ぁ~んの代表は現在まで続けられているのですね。
代表になってから現在で13年ですね。まぁ代表といいつつそんなに大したことはしてなくて、ただ自分もタイピングしているだけなのですがw
―――現在、ぁ~んはどのような活動をされているのですか?
タイピング同盟ぁ~んは、タイピングが好きな者同士競い合い刺激し合い楽しみながら成長していこうという趣旨の元、結成されたタイピングのコミュニティです。団体活動としてe-typing腕試しレベルチェックに毎週参加したり、各々メンバーが各種タイピングサイト、競技を通して活動しています。
ぁ~ん自体は今年で14年目になりますが、ここまで続けられたのは温かく見守ってくださる方々、一緒にタイピングを続けてくれる仲間がいたからです。自分一人ではここまでタイピングもぁ~んも続けられなかったと思いますし、支えてくれてきた方々の存在が何よりも大きいです。
あとはもう、ただ単純にタイピングが楽しくてやめられなくて、気がついたら14年経っていました。そういう意味で、タイパーである自分の生まれ故郷であるバトタイとぁ~んはずっと特別な存在です。
―――バトタイが2020年末、Flashの対応終了に伴いプレイできなくなるとも言われています。
ずっとお世話になってきた、生まれ故郷のバトタイがなくなるかもしれないという状況に正直いまだに実感が湧いていません。それぐらい自分にとっては日常の一部的な存在で、でも一方で「ついにその日がやってくるのか」と覚悟もしています。
Flashが終了しても移行、変換など別の形で続けられるのであればバトタイはずっと続いてほしいというのが本音ではありますが、それもそう簡単な話ではないだろうということもわかってはいます。
バトタイがあったからこそ自分は趣味としてタイピングを始め、今日まで続けてこられました。16年もの長い間バトタイを運営して下さった、制作者のかじさんには本当に感謝してもしきれません。その感謝の気持ちを忘れることなく、今まで以上にバトタイに通える時間を大事にしたいと考えています。
数年ぶりにバトタイの大会が開かれて、昔常連だった人たちもまた皆で集う機会があったらいいなぁとも思います。これからもいろんな人とできるだけバトタイで沢山対戦したいです。
―――はじめてタイピングのオフ会に参加したときのことも聞かせてください。
いわゆる大規模タイパーオフに参加したのは2010年が初めてで、それはタイピングサミットのようなものでしたが、ぷんださん主催のオフでした。
そこで初めて大勢のタイパーさんと直接お会いして対戦して話して、古参のタイパーさんたちの生の打鍵に衝撃を受けました。隅野さん、dqmaniacさん、ひろりんごさんたち、今もお世話になってる方々にお会いしたのもその時が初めてです。
自分はタイピングの大会そのものに参加したことがなかったので、大勢のタイパーさんが同じ会場に集まっているというだけでもう大興奮で、雲の上のような方々と直接お話しできて、対戦できて、夢をみているような心地でした。あと、隅野さんがぁ~んを知っているということに衝撃を受けました。
その大規模オフがあまりに自分の中で衝撃的で、その後2012年にあった第4回タイピングサミットにも参加して、以降は毎年参加しています。
毎年タイピングサミットに参加することで 普段は出会えないような様々な考え方や価値観を持つタイパーさんと沢山話して対戦ができて、タイピングの楽しさ、奥深さを改めて感じられます。趣味としてタイピングをやってきたからこそ出会えた人たちと過ごせる楽しいひとときです。
毎年、サミットまでの目標をたてて達成することで自身のモチベーション維持にもつながっていて、気がつけば毎年参加するのが当たり前のような感覚になっています。
サミットに行くと、もうただ打ちたくなります。サミットに参加しただけで記録更新できるぐらい気持ちが強くなれる気がします。
―――mayoさんは2011年頃、一度タイピングが休止状態だったことがあるそうですが、その頃のことをお聞きしてもよいですか?
社会人になり、いわゆるブラック会社で働き、しばらく仕事が忙しすぎて精神的にも肉体的にも追い込まれて、休日もあまりネットを繋げない状況が続き、タイピングもほぼ休止状態でした。
本格的に復帰したのは仕事をやめてからですね。あくまでタイピングが嫌でやめたわけではなく、タイピングを楽しむ余裕があまりなかっただけなので、仕事をやめたことでまた余裕ができて、タイピングに戻ってこれたって感じです。
―――Interstenoオフライン大会(2年に一度開催されているタイピングの世界大会)に参加したときのことも教えて下さい。
2015年、タイピングサミットを毎年主催している隅野さんの働きかけで、ハンガリーのブダペストで開催されたインテルステノオフライン大会に参加しました。インテルステノ大会はオンラインでもオフラインでも、日本だけではわからない世界の広さ、強さを思い知らされますね。
(参考リンク:50th Intersteno congress 2015 Budapest - -m-Typing Note)
ブダペストのインテルステノ大会は7種目のうちから選択して参加するというものでした。オフラインでは日本語部門がないため、全て英語での参加となり、自分含め多くの日本人はTP(Text Production)に参加しました。TPはA4用紙に印刷された英語の文章を30分間で打つというものです。速度制限は分速360文字(72wpm)以上、ミス制限は0.25%以内という条件でした。
実際やってみると初めてで緊張して思うように上手く打てなかったです。紙に書かれた文章を打つという経験があまりなく、その経験も積んでいかなければだめだなと実感しました。結果的には自分は合格基準には届きませんでしたが、何人かは合格基準を突破してランキングリストに日本人として名前を残しました。
(参考リンク:【タイピング世界大会】Intersteno2015の競技結果に対する感想まとめ - Togetter)
個人的には悔いが残る結果となりましたが、競技や競技以外のイベントに参加したり、世界中の人々とタイピングを通して交流できて非常に有意義な時間でした。帰ってから、もっと英語タイピングを上達させたいと思い、より一層英語タイピングに打ち込むようになりました。初めて世界大会に参加したブダペスト遠征は一生忘れられない経験です。
―――英語といえば、現在mayoさんはTypeRacer英語の対戦会も毎月主催されていますね。はじめようと思ったきっかけは何ですか?
TypeRacerを初めてプレイしたのは2012年で、英語タイピングを続けるうちに頻繁にTypeRacerに通うようになりました。世界の人々と対戦したり知り合いのタイパーさんと対戦したりしていたのですが、定期的に対戦できる機会があったらいいなと思い、ないなら自分で作ろうってことで2013年から始めました。
Twitterのフォロワーからフォロワー外まで、様々な人たちと一緒に英語タイピング対戦ができるのがただ楽しいですし、自分一人の練習よりも他者との対戦のほうがより刺激が強くモチベーションが上がります。
30分という短い時間ではありますが疲れすぎず、ただ連戦するというのがシンプルに好きですね。TypeRacerは正確性重視なので安定性も鍛えられます。
あと気のせいではなく、TypeRacer後のタイプウェル英単語はめちゃくちゃ打ちやすく感じます。対戦会のおかげで何度も更新できました。実際連戦した後は指が温かくてよく動いて、タイプウェルを打つと更新が結構飛びだすんです。自分が出した英語の更新記録の多くは対戦後に出していたような気がします。
対戦会は、去年までは毎週日曜日に開催していて、今年からは毎月第二日曜日の開催ですね。
(次回の対戦会は12月13日日曜日の夜8時半~)
―――現在のタイピングの練習時間を教えて下さい。
最近は日によってまちまちですが、多いときで2~3時間、たまーに土日だと4,5時間以上やっているぐらいかなと。基本的に疲れて打てないときは無理に打たず、打てる時に打っています。
―――タイピングの記録更新はやり込めばやり込むほど難しくなっていくものだと思うのですが、それでもタイピングに打ち込むモチベーションは何ですか?
記録更新だけを狙っていると更新できないってだけで落ち込みますし、なかなかそのモチベーションを長く維持するのは難しいと思うのですが、その時その時で小さな目標を立てて、小さくても達成できたら成長を感じられるのが嬉しいです。
―――具体的には、どのような目標を立てていますか?
その日によりますが、「今日はXX以上を出す」「今日はトップ50位以内にランクインする」という、本当にささいな目標です。「今日は何回打ちきる」「何時までは打つ」「~が出たら寝る」のような細かい自分ルールを立てています。
そういう小さな目標と、もう一つの大きな目標(「総合○○になる」など)を立てながら続けています。
―――最後に、今後の目標や意気込みなど聞かせてください。
今後の目標は、タイプウェル国語R総合ZI、慣用句ZJ、英単語総合ZHです。自分はあまり成長は早いほうではないですが、マイペースに目標達成に近づいていければと思っています。
自分なりにタイピングを全力で楽しみ、タイピングの魅力を沢山の人に伝えていくことができればなと思っています。
◆ ◆ ◆
mayoさん、長時間のインタビューありがとうございました!
次回、4回目のタイパーインタビューでは、RTCをきっかけに30代から競技タイピングを始めたpogiさんにお話を伺いました。(pogiさんの誕生日でもある)12月9日(水)に公開を予定しています。
また、タイパーアドカレ2020の明日の記事は、donuts29さん(@donuts_29)による「10年以上お世話になった小指をリストラした話(タイピング最適化)」です。そちらもぜひご覧ください。